館長からのメッセージ
2018年10月
OECD日本政府代表部大使
大江 博

2017年2月にOECD日本政府代表部に着任しました大江博です。直前は、内閣官房のTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)政府対策本部において首席交渉官を務めておりました。外務省に入ったばかりの頃、フランスのエックス・アン・プロヴァンスでフランス語の研修をしてから、約36年経ちましたが、実はフランスに勤務するのは今回が初めてです。着任以来、毎日新鮮な気持ちで、OECD事務局や当地に駐在する他国の代表部とも協力して、OECDの活動が我が国や国際社会にとって有益なものとなるよう仕事に臨んでいます。
1961年に発足したOECDは、加盟国の経済成長や雇用・生活水準の向上、自由で多角的な貿易の拡大、そして発展途上にある国の経済開発を目的に、世界経済の分析・調整とルール作りに大きな役割を果たしてきました。現在、OECDには日本を含む36か国が加盟し、経済、財政、金融、貿易、開発といった様々な分野で、国際社会が直面する経済政策・社会政策の面での諸課題について、加盟国を含む国際社会全体にとってより望ましい政策の提言や、共同して守る基準の作成などの取組を行っています。さらには、OECDは、守るべき基準の達成度について加盟国間でお互いを評価し合う仕組みや、効果的な広報を通じて、実際にその履行を促す「シンク・ドゥー・タンク」としての役割も兼ね備えています。日本は、OECDの作成する基準の履行や、OECDで行われている将来の基準作成に関する議論への積極的な参加を通じて、OECDの基準の国際社会への普及にも貢献しています。
また、新興経済諸国が世界経済に与える影響が非常に大きくなっている現在、OECDは、G20等のグローバルな枠組への知的貢献を行うなど、国際社会において新たな役割を担うようになっています。更には、成長著しいアジア地域への関与強化に力を入れるため、2013年にはOECDと東南アジア地域との協力強化のためのプログラムが立ち上げられ、日本は2018年3月までその運営グル-プの共同議長を務めました。今後も、アジアの一員として、日本はOECDとアジア地域の架け橋としての役割を果たしていきます。
昨今、世界では、反グローバル化、保護主義、排外主義的な動きが強まっているように感じます。しかし、このような時代だからこそ、OECDの強みである、実証的なデータに依拠した政策提言を活かしながら、どうすればグローバル社会の利益を増進し、負の側面を克服できるか、OECDを通じて日本が率先して強いメッセージを出していかなければならないと思っています。
このホームページが、OECDの幅広い活動・成果や日本との関わり、代表部の仕事について、皆様の御理解の一助となれば幸いです。また、皆様からのご意見やご提案を歓迎いたします。